沖縄発展の基礎を築いた
第8代沖縄県知事・奈良原繁
そ の 108
この税制上の優遇措置とは具体的には日本鉄道と政府との関係は、特許条約書に示されており日本鉄道は政府によって様々な特典を与えられるとともに、見返りとして義務の制限を課された。
特典としてあげられるのは、@官有地にある線路や停車場などの鉄道用地や建築物の無償貸し付け。A民有地買収では、政府が買い上げて日本鉄道に払い下げする。
B鉄道用地の国税免除。C株主の出金に対して建設期間中の年8分の利子補給・開業後、純益が年8分に不足する場合には、各区で異なるが、10〜15年にわたり不足利子を補う。D東京〜前橋間の建設工事は差栄府が代行する。第1区〜第5区建設工事の鉄道局への委託などであった。
E社用電信線を官有電柱に使用できるなど、私設鉄道でありながら官設鉄道の趣を呈していたのである。
しかも日本鉄道の資本金は2,000万円と当時の沖縄県の年間予算の約20年分に相当する金額である。
日本鉄道には、1881年4月に発起人総会で資金調達方針について意見が分かれ、紛糾したことがあったものの、5月には,池田章政(当時第十五銀行頭取ほか461人連名で創立願書と特許に関する請願書)を提出した。
発起人の出資額によると第十五国立銀行の出資が130万円、三菱関係が約45万円、天皇関係が約35万円、華族個人関係が約70万円、福島県300万円、宮城県1,200万円、埼玉県250万円、栃木県250万円のほか、各県では郡役所を通じて戸長にわり当てたり地元有力者に引き受けさせて株主を募集した。
日本鉄道は、民間企業の形態を取りながらもわが国を代表する大企業や国立銀行、華族さらに皇室からも出資するという国家的大プロジェクトが国のあらゆる優遇措置をもって事業が進められた一方、沖縄においては沖縄県や明治政府の何等の優遇措置を講ずるこことなく、裸の状態で鉄道事業を起こすことは日本鉄道建設に携わった大久保利昭からすれば、無謀な冒険といわざるを得ない。
このような意味では、却下されたほう莫大な借金を抱えて苦労するより、大久保利昭にとってむしろ幸いだといえると思えてならない。
元一般社団法人・万国津梁機構 理事長仲里嘉彦
沖縄県浦添市屋冨祖2丁目1番9号
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